YAEYAMA, OKINAWA
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ARTICLE · INTERVIEW · 2026.07

INTERVIEW

生きることは「美しいもの」を見ること

―鮮やかな色彩を重ねたコラージュ作品に込める、生きることへの想い―


Casita Shakotan 個展、舟蔵の里ギャラリー邑にて
舟蔵の里ギャラリー邑にて(2025年9月撮影)

鮮やかな色彩で描かれた草花や鳥、亀や牛たち。その画面からあふれるのは、生きるエネルギーそのもの。背景には、「生きるということは、美しいものを見ること」というCasita Shakotan(カシータ・シャコタン)さんのまっすぐな思想があった。

スペインの古紙と日本の和紙を使い、コラージュ作品を制作しているShakotanさんに、作家活動を始めた経緯や制作への想いを伺った。

書からコラージュへ

「prosperity(繁栄)」
「prosperity(繁栄)」

―色彩の豊かさが印象的ですが、もともとは書をやられていたんですよね。

小1から書をやっていました。書の世界はヒエラルキーがすごいんですよね。師匠がいて、弟子がいて。そしてみなさんすっごく上手。臨書をずっとやっていかないと筆がきちんと扱えない。いつも誰かに評価され、直される。周りにうまい人ばかりいて達成感がなく、自分を責めて苦しくなることもありました。表現というよりは正解に近づくような世界です。「道」と名の付くものは師匠がいて道を作ってくださってそれはそれですばらしい世界ですが、自分はこれで満足しないだろうとずっと思っていました。

―書の世界から、絵に転向されたのはどんなきっかけだったんですか。

1990年代に仕事でバルセロナに行かせてもらったときに、友人が「あなたは絵を描いたほうがいい」と言ってくれました。芸大を出ているわけでもないし、と思っていたけれど、考えたら彼自身も芸大出身ではなかったんですよね。

バルセロナには200以上のギャラリーがあり、有名な美術館もたくさんある。展覧会のオープニングや建築家の講演会、市の文化行事などにも足を運び、文化が生活の中に息づいている空気を間近で感じました。制作する人たちの話を聞く時間が、本当に楽しかったんです。

バルセロナでのフィールドワークで撮影した写真。市民による文化芸術活動を調査していた(写真提供:C.Shakotan)
バルセロナでのフィールドワークで撮影した写真。市民による文化芸術活動を調査していた(写真提供:C.Shakotan)

―カタルーニャに興味を持ったのはどうしてですか。

子供のころからゴヤやピカソ、ダリなどがずっと好きだったんです。だから、いつかは行くだろうなと思っていました。

―なるほど、美術作品に惹かれたのがはじまりだったんですね。コラージュ作品の制作は、どんな経緯で始めたんですか。

コラージュは、ちょこちょこ作ってたんですよ。スペインから帰国したあと、自分用に作ってみたりしていました。作ってほしいという依頼があれば作ることもあったのですが、初めは展示などはしていませんでした。自分で道を開拓したというよりも、自然と導かれたような感じでした。

お祭りの中心となる巨人人形の祭祀集団の方々とは、今でもクリスマスカードのやりとりをするなど、心の交流が続いている(写真提供:C.Shakotan)
お祭りの中心となる巨人人形の祭祀集団の方々とは、今でもクリスマスカードのやりとりをするなど、心の交流が続いている(写真提供:C.Shakotan)

コラージュ制作を通した芸術表現への探求

―コラージュという技法に関しては、どこかで学ばれたんですか。

いやそれはね、全然なくて、ミロにしてもダリにしても、大きなキャンバスの一部をコラージュにしているものがあって、それが以前からすごい気になってて。ああ、こういうの自由にやっていいんだって思ったんですよね。印刷物を作品の中に貼ったり、そこにペイントしたりというのをたくさん見たんですよ。自分でもやってみたいなと思っていました。

コラージュって貼ったりするから平坦なんですけど、いろんなものを組み合わせることによって奥行きが出ます。奥行きは見た人の想像力であったり、経験であったり、それによって全然違って見える。そういう複雑なものが好きです。そういう意味では抽象画を目指しているのかなとも思います。いったいこれは何なんだ?というものがないと面白くないと思っているんです。

「今という贈り物~The gift of now」
「今という贈り物~The gift of now」

―確かにShakotanさんの絵は、鳥だとはわかっても何の鳥かはわからないような、抽象的な表現ですよね。

漠然と、よく見たら鳥だったり、よく見ればカメだけど本当のカメはこんな色してないよね、みたいなものを登場させて、見る人に「えっ」という驚き、インパクトを与えるような表現を心がけています。

―ちょっとひっかかるものがあったほうが面白いですよね。

そうなんです。ちょっとおもしろいなと思えたときに、腑に落ちるような感覚があるんです。書をやっていたときにはなかった感覚。あまり描いているという感覚はなくて、作っているという感じなんです。自分が想像もしなかった「これだ!」という瞬間があります。陶芸家の方が、窯で焼いてみたらおもしろいものができた、みたいな感覚に近いかもしれません。紙を組み合わせてみて、「あ、これおもしろいやん!」というものが生まれる。

舟蔵の里ギャラリー邑での個展(2025年7月開催)
舟蔵の里ギャラリー邑での個展(2025年7月開催)

―作る前にモチーフを設定して作るんですか?もしくは紙のデザインからインスパイアされてモチーフが決まることもありますか?

両方あります。例えば花をメインに考えたときに、どんな色が来たら意外性があるかなと考えたり、紙のどの部分を切り取って、どんな文字が来たらおもしろいかなと考えたりします。画面のどこかに急に電話番号が書いてあったり。

―それは意外性があっておもしろいですね。

書との決定的な違いは、自分が無邪気に作っていること。私って色が好きだったんだ、色を使いたかったんだ、ということに気づいたんです。子どもが後先考えずに楽しく作っているような感じで制作しています。

八重山と色彩

生きることは「美しいもの」を見ること

―Shakotanさんの作品は本当に色が印象的ですよね。石垣島にいると、わりと色がある場所だなと思います。花の色がすごく強かったりとか。空の色が強かったりとか。なんというか、都会に暮らしていると、あんまり色のない世界だったりとかしますよね。

そうなんですよ。無機質なものに囲まれているので。だからこの石垣の空気感は私には合っているなぁと思います。

―色が好きというのは小さい頃からですか?

小さい頃から好きで、よく絵を描いていました。スペインは色も造形もすべておもしろかったです。やっぱりいろんな色と形を日常的に見られてすごく幸せな環境でした。

―縁あって今は八重山が制作の源となっているんですよね。

そうですね。八重山の自然をモチーフにすることが多いです。朝起きて、ふとこういうの作ろうかな~みたいに思いついて作ってみたり。あとはわりと歩いている時とか散歩してるときが多いです。どこにいても、思いつくとすぐメモするんです。昔からメモ魔で、なんでもメモするんですよ。

仕事もそうだし、生活も、すごい競争の中でやってきたから、競争から抜けた今はすごく幸せな気持ちです。もともとはコンサルティングの仕事をしていて、外国人高度人材の就労支援などをしていました。現在は骨髄バンクで、病気でキャリア形成が困難な方の就労支援などに取り組んでいます。

生きることは「美しいもの」を見ること

―すごくゆったりした気持ちで、制作に臨まれていて、そういう気持ちや大切にされている想いが見る人にダイレクトに伝わっている感じがしますね。

制作していると、集中して嫌なことも忘れちゃうんですよね。作ること自体も癒しになっていて、瞑想に近い部分もありますね。

フランスの哲学者エドゥアール・モランの「生きるということは、生によって与えられた自分の可能性をめいっぱい享受することである」という言葉がとても好きなんです。自分に可能性というものがあるとしたら、それに蓋をしないようにしてやってみる、ということを大切にしています。

「嬉しいことがいっぱい~Lots of happy things」
「嬉しいことがいっぱい~Lots of happy things」

―1歳の娘がShakotanさんの絵をすごく気に入って、自分で一点選んでいたのですが、その絵のタイトルが「嬉しいことがいっぱい」っていうタイトルで、すごく嬉しかったんです。

私自身、子どもを持ってから気づいたことがあって、生きるって、美しいものを見ることだと思っているんです。美しいものっていうのは、例えば景色だったり、作品だったりするかもしれない。他にも人の心だったり、気持ちだったり、そういうのも美しいものの中に入ると思うんです。そういうものを見るために生まれてきたんだなってすごく思います。だから美しい人にも敏感なんですよ。その人の瞳とか、雰囲気とか、にじみでるような美しさです。

―人って見たいものしか見えない気がします。同じ景色を歩いていても、見えているものは人それぞれ違う。だからこそ、美しいものを見ようとする感性を育てること自体が、とても大切なのかもしれませんね。

生きていると苦しいこともたくさんありますが、なるべく楽しいことや嬉しいことを心に思い描いて生きていくということを大切にしています。作品を誰かに届けるということは、その人の生活に入り込むということですよね。だからいい影響があるものを作りたいと思っています。大変なことがたくさんあるからこそ、気持ちが明るくなるものを届けたいと思っているんです。

―これからやってみたいことはありますか?

大きな作品を作るために、石垣島にアトリエを持ちたいですね。とにかく大きな作品が作りたいです。

生きることは、美しいものを見ること。そう語るShakotanさんの作品には、日々の暮らしの中で見落としがちな色や喜びに、そっと目を向けさせてくれる力がある。これからの制作からも目が離せない。

生きることは「美しいもの」を見ること

Upcoming Exhibition/これからの展示

Casita Shakotan個展「見上げれば、いのちはじける」

Casita Shakotan個展「見上げれば、いのちはじける」
Casita Shakotan個展「見上げれば、いのちはじける」

PART1 〈夏きらきら〉 ホテルエメラルドアイル石垣島 2Fギャラリー 7月29日(水)〜8月2日(日) 10:00〜19:00

PART2 〈八重山の風〉 舟蔵の里ギャラリー邑 8月6日(木)〜8月11日(火祝) 10:00〜19:00

カシータ・シャコタン