声を残すことから始める。HUB RADIOはじめます
八重山で表現活動をする人たちに話を聞くポッドキャストをはじめた。第一回は、Art Flowを運営する私たち二人の、なぜこれをやるのかという話です。
八重山で表現活動をする人や、アートを取り巻く人たちに話を聞く。そういうポッドキャストをはじめることにした。名前はHUB RADIO(ハブレディオ)。第一回は、我々二人が向かい合って、なぜこれをやるのかという話をした。
収録はマイク二つ。会話の内容を編集で整えることもできたが、ほぼそのまま残した。読み物としてのこの記事は、その対話から生まれた別のもの。書き起こしではない。
メディアをつくるということ
ART HUB YAIMAをはじめてから、記事にならない話が色々と積み重なることが多くなってきた。展示の前後にある雑談、取材のあとで交わす短いやりとり。文字にすると角が立つか、あるいは薄まってしまうような話とか。
声にはそれが残る。言いよどみも、間も、笑いも含めて残る。
記事では、何が大事なのかを整理して、順番を組み立て、一つの読み物として届けることができる。一方で音声には、まだ整理される前の考えがある。
文章と音声が、同じことをする必要はないのではないかと思った。だから、同じ対話から記事では別のものをつくってみることにした。
十年後に聞き返したときに残っているのは、話した内容だけではない。誰がどんな声でそれを言ったか。どこで笑ったか。少し考えてから、どんな言葉を選んだのか。
2026年の八重山で、この人が、この場所で、こんなことを考えていた。
そういう記録が少しずつ積み重なっていけば、HUB RADIOはいつか、八重山のある時代を人の声から辿ることができるアーカイブになるかもしれない。
考えている途中を残す
Vol.0を録ってみて気づいたのは、完成した答えよりも、その答えにたどり着くまでの時間がおもしろいということだった。
「こういうことなのかもしれない」と話して、少ししてから「いや、そうでもないか」と言い直す。相手の言葉を受けて、最初とは少し違うことを考え始める。
文章にすると、そうした揺れは整理されることが多い。でも、人が何かを考えているとき、本当はその途中にもたくさんの情報がある。
HUB RADIOでは、うまく話せたところだけを残すのではなく、その人が考えている時間もできるだけ残していきたい。
もちろん、何も編集しないということではない。その部分があることで、その人や、その場への理解が少し深くなる。たぶん、それが一つの基準になる。
あなたにとって八重山とは
毎回のゲストに同じ質問をすることにした。
「あなたにとって八重山とは何ですか」。
答えにくい質問だと思う。答えにくいから聞く。
観光の文脈で語られる八重山と、ここで暮らしている人が持っている八重山は、当然ながら違う。どちらが本当ということでもなく、両方ある。
人によっても、時期によっても、その答えは変わるはず。
一人ひとりの声を聞いていくことで、作品や活動だけを見ていると見えなかった八重山が、少しずつ立ち上がってくるかもしれない。
気楽な入り口として
アートという言葉は、それだけで人を遠ざけることがある。美術館に行く習慣がなければ、自分には関係のないものだと思うのも自然だ。
この番組は、その手前にある話をしたい。
誰かが何かをつくっていて、それをおもしろがっている人がいる。そのくらいの粒度の話を、雑談として置いておく。
話を聞く相手も、いわゆるアーティストだけとは限らない。何かをつくる人、それを支える人、伝える人、受け継ぐ人。文化や土地の記憶を持っている人。
人の声を入口にして、その人の向こう側にある八重山を聞いていく。
HUB RADIOが何になるのかは、まだ決まっていない。これから話を聞く人たちによって、番組の形もきっと少しずつ変わっていくはずだから。
